ラーニングロッカーの開発元であるHT2社のブログより,引用し翻訳しています。
引用元:https://www.ht2labs.com/blog/5-common-lrs-questions-answered/
企業などの組織が,学習と学習者の分析というものに価値を見出し、xAPI(*1)を利用して学習者の学習履歴データを収集するようになると、それに伴い,そのデータを収集するためのデータベースであるLRS(*2)(ラーニングレコードストア)への関心も高まることは避けられません。
しかし、xAPIと同様に、LRSがどのような役割を果たしているのか、またそれが既存の学習エコシステムにどのように適合するのかについては、多くの誤解があることも事実です。
そこで,LRSについて明確に理解するためにも、LRSについて最も頻繁に尋ねられる5つの質問について共有したいと思います。
xAPI(*1):Experience API
あらゆる学習履歴(経験)データを収集・記録するためのデータ仕様のオープン標準規格。ADL(米国国防総省組織)により策定・公開されている。
LRS(*2):ラーニングレコードストアLearning Record Store
学習履歴データを格納するためのデータベース。
LRSってなに?
ラーニングレコードストア(LRS)とは、xAPI仕様に準拠し、学習システムの有効なアクティブティデータを格納するデータベース、また,管理者が分析のために「生の」xAPIデータを利用するためのデータベースです。
従って,xAPIステートメントを利用するならば、アクティビティデータ格納のために必ずLRSが必要になりますが,xAPIステートメントを取扱うシステムが1つもなければ、LRSは必要ありません。
LRSは,さまざまなシステム間で相互運用が可能になるように設計されています。従って,一度に複数のシステムを実行してデータを共有したり、データを簡単に別のシステムに転送することができます。このときに最も肝要なのは、あなたが収集するデータの質にあります。良質のデータは,良質なアウトプットを生む!ということです。
なぜLRSが必要なの?
多くの組織にとって、すべてのシステムで発生した学習活動を,単一の記録源で取得することは夢でした。組織内では,複数のLMS(Learning Management System)やサードパーティツールが使用されていることは珍しくありません。
複数のLMSが存在したり、学習者の学ぶ場所が複数あると、学習者の追跡は難しくなります。さまざまな学習システムで,どこででも学習可能な現在の状況は,さらに学習者の追跡を難しくしています。
一般的に、複数のシステムを相互に接続する必要がある場合、それ相応のカスタマイズを伴い、相互に接続を確立する必要があります。
ソフトウェア会社の営業担当者は、「弊社のシステムは,APIを持っているので、技術的にシームレスに統合できる」と話すでしょう。しかし、単にAPIを持っているだけでは不十分です。”標準規格の” APIでない限り、カスタムで統合メソッドを記述してシステムを接続する必要がでてくるのです。
システム導入の際には,考慮すべき多くの関連の標準規格があります。たとえば、シングルサインオンには、SAMLやoAuthなどの標準規格があります。しかし、学習活動データを共有するために、実質的に標準化され利用可能なAPIは,xAPIこれ1つしかありません。
あなたのシステムがxAPIを利用すれば、システム間でLRSを介してお互いの通信を容易にします。そして,複数のシステムのアクティビティデータはLRSに統合収集され,これら全てのアクティビティデータの利用を可能にします。
これにより、開発が必要となるカスタマイズの数が削減されるだけでなく、すべてのアクティビティの単一規格のソースが提供されます。それが,ラーニングレコードストアLRSです。
LRSは,お互いに相互運用可能であるため、違うシステムに移行するときも最小限の手間でリプレースすることができます。これが、LRSとLMSとの大きな違いです。LRSがそのためにどうなっていなければならないかは厳格に規定されています。あなたの利用するLRSがこれらの規格に準じていれば、問題ありません。
LRSとLMSとの違いってなに?
「LRS」という用語は非常に特定的であることに注意することが重要です。LRSは、xAPI仕様に厳密に準拠したものであり、ラーニングマネージメントシステム(LMS)とは別のソフトウェアを指します。基本的にLRSを構築するための決まりごと(レシピ)があります。このxAPI仕様の一部を省略したり、標準規格に基づいていない方法で実装されたりしたものは、LRSではありません。
LMSとLRSの間には多くの違いがあり,LRSを入れたからLMSは不要になるというものではありません。
LMSはコンテンツへのアクセスを管理し、学習コンテンツをアップロードし、学習者に割り当て、進捗状況を追跡する機能を提供します。しかし,LRSはこれを実行する機能はなく,ほとんどの学習者は、LRSがバックグラウンドで動作していることに気づくことさえありません。
LMSは、おそらくeラーニングコンテンツの立ち上げにも対処しまが,これはxAPI仕様ではなく,標準的なLRSの機能ではありません。
LRSを導入する理由は,明白です。LRSは,「xAPIに準拠した」LRSと認定されるために、3,500以上のさまざまなテストが行われています。
LRSの重要な機能の1つは、データがxAPI仕様に準じているかどうかをLRS自体がチェックすることです。LRS自体がこのチェックをしないと、再利用できない無駄なデータを保管してしまう可能性があります。
LRSは,LMSの一部分であるべきか?
既存LMSインフラを改修して新たにLRSの機能を追加することは,時間とコストがかかる難しい決断です。しかし,LMSにLRSコンポーネントを追加することで、既存のシステムをアップグレードして新しい機能を組み込むことができると考えるのは魅力的です。そうすることで,あなたのLMSは、学習データのソースとして、利用できそうだからです。
しかし、それはスタンドアローンのLRSを構築することに比べれば,余り良い解決策にはなっていません。
パンフレットに「xAPIに準拠しています」と書いてあっても、LMSが,アクティビティプロバイダ(データ生成元)なのか?ラーニングレコードストア(データ格納)なのか?、はたまたxAPIデータのコンシューマ(データ利用)なのか?分かりにくい場合があります。
これらは、データ生成、データ格納、データ利用という3つの非常に異なる役割を果たします。しかし,この区別を明確にできるベンダーはほとんどなく、ベンダーがxAPIの規格に完全に準拠しきれていない可能性があります。このような理由から、そしてこれから述べる以下の特性を考慮すると、スタンドアローンのLRSについて検討する必然性がますます高まります。
LRSは、技術的にはLMSにはないConnectivity、Analytics、Scaleという特性を満たします。
Connectivity:接続性
データを登録するために,ユーザーはLRSを操作する必要もなく,LRSの存在自体を意識することもありません。アカウントも必要ないです。ログインもしません。一方ほとんどのLMSでは、ユーザーはLMSを介してコンテンツとリソースにアクセスする必要があります。しかし、これはパフォーマンスを測定する上で大きな障壁です。LRSの存在を意識することがない点,これはxAPIが本当に優れているところです。
また、多くのLMSは、システムにデータを送信するユーザ数に基づいて課金するように設定されています。xAPIでは、データを収集できるユーザー数に制限はありません。次回のLMSの請求書が届いたときに驚くかもしれません!
Analytics:分析
ダッシュボードと分析は,xAPI仕様自体の一部ではありませんが、管理者がデータを処理することで,分析のための視覚化が可能になります。しかし,LMSは、基本的にはコースやコンテンツを中心に構築されており,データアナリティクスを想定した構築がされていません。従って,LMSに,xAPIデータを「保存」するだけでは,データアナリティクスにとっては不十分であり,パフォーマンスの状況を把握するには、本当に強力な分析が必要で、LMSが扱う結果データだけでは不十分かもしれません。
Scale:規模
LRSは,膨大な量のデータを保存し処理する必要があります。ある程度の規模の企業で LMSへのデータポイントを確認したところ、xAPIアクティビティは、1日で1,000,000件のステートメントを生成することがわかりました。これは、LMSが一般的に扱うより、大きなオーダーです。通常、これはNoSQLデータストアでの対応を意味するもので,現状では,これに対応した主要なLMS製品は存在しません。
これらは,LMSがもはや必要ではないことを意味するものではありません。前に述べたように、LRS自体は,コンテンツを「起動」しないし、アクセス,ログインの処理を行ないません。このようにLMSとLRSは、根本的に役割が異なる学習のためのシステムといえます。
LRSにかかるコストはどれくらい?
LRSは,一般的に非常に低コストです。 実際に、HT2社独自のLRSである「ラーニングロッカー」オープンソース版は,無料で提供されています。あなたが実際に支払う主なコストは、(既存のシステムとの)統合のための開発コストと(xAPIデータの)ストレージ環境運用コストのということになります。
HT2社では,新しいクライアントと作業を開始するときには、「LRSインストールのためのチェックリスト」を利用しています。
以下は、LRSを最初に調達する際に考慮すべき重要なチェック項目です。
LRSとのデータのやり取りする際,xAPIデータがどのように保護されているのか、そしてデータベース内でどのように安全に保護されているのかについて配慮しておく必要があります。文字通り、LRSにxAPIデータを送信する際,SSLを使用しないということはありません。また、ほとんどのクラウドプロバイダー(ラーニングロッカーを含む)は、暗号化をおこなっています。
最悪のシナリオで失われるデータの量はどれくらいですか?頻繁に利用されるLRSは、あなたの重要なインフラの一部になっていくでしょう。従って,すべての学習活動のためのデータが失われたり、動かなくなることは許されません。冗長性とバックアップのため、いつどれだけのダウンタイムに対処できるのか?どのくらいのデータを失うことが許容できるか?も事前に検討する必要があります。
「株式会社インフォザイン」は、東京 上野にオフィスを構え、教育とテクノロジーを融合させたEdTech分野でビジネスを展開しています。
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